生と死の自然史 進化を統べる酸素

ニック・レーン 著
東海大学出版会
原題:OXYGEN The Moleculde that Made the World

本書は大変ユニークな本である。また、著者は単なるサイエンスライターではなく、第一線で活躍する科学者でもあるので、他人の受け売りを書いただけと言う本ではない。

著者は、最初の生命の共通祖先LUCAは、酸素を嫌っていたのではなく、むしろ酸素をエネルギーとして利用していたのだと言う。もちろん、光合成が行われるのはずっと後のことだから、酸素濃度は非常に低かったに違いない。しかし、紫外線により水は分解され、その際、酸素が発生する。LUCAは、誘拐水素や鉄など様々な代謝能力を有していただけではなく、酸素を利用した代謝光合成以前に持っていた。それと同時に、酸素の強力な毒性に対抗する降参か能力もすでにもっていたようだ。そうでなければ、酸素発生型の光合成が現れるはずが無い。なぜなら、降参か能力が無ければ、光合成によって発生した酸素により、酸素中毒で死んでしまうからである。

本書の後半では、主に老化と酸素の関係について述べている。主役はミトコンドリアである。ミトコンドリアは酸素呼吸を行う細胞のエンジンである。しかし、後期呼吸を行う際に発生するフリー・ラジカルによってダメージを受ける。老化は、フリー・ラジカルによってミトコンドリアが劣化することが原因であるそうだ。