地ひらく 石原莞爾と昭和の夢 (下)

福田和也 著 (文春文庫)

単なる石原莞爾の伝記ではなく、大正から敗戦までの歴史書でもある。第二次世界大戦のような石原莞爾とは直接かかわらない事柄についてもわりと詳しく書いてある。

石原莞爾が主導した満州事変から満州国建国、相沢事件、二・二六事件、盧溝橋事件、日中戦争南京事件第二次世界大戦、太平洋戦争までの一連の流れが筆者の歴史観をもとに原因、及び、歴史的意義が書かれている。

参考となった点も多かった。たとえば、二・二六事件の原因となった皇道派と統制派の差異は、その出自による対立からきていることなどははじめて知った。統制派の構成員は陸大卒のエリートである一方、皇道派は陸大を出ていない非エリートであり、彼らの天保銭組み優先に対する反発こそが統制派と皇道派の対立のそもそもの起源だったそうである。また、チェコスロバキアの陸軍はドイツ陸軍よりも師団数も多く機械化の度合いもドイツよりも高かったことや、ポーランドが善良な弱小国でなかったことなど、初めて知ったことがたくさんあり参考になった。

自分の不勉強を痛感した。