暦をつくった人々 人類は正確な一年をどう決めてきたか

デイヴィッド・E・ダンカン
河出書房新社

現在、我々が使用している暦はグレゴリウス暦と呼ばれる暦で、1582年にローマ教皇グレゴリウス13世によって発布された。それまでキリスト教世界で用いられていた暦は、ユリウス・カエサルによって紀元前45年に発布されたユリウス暦であった。ユリウス暦は、単純に4年に一度閏年をもうける方式で一年を365.25日とする暦である。しかし、ユリウス暦は実は真の一年とは一致しておらず、真の一年よりもおよそ11分14秒過大に見積もっていた。この誤差のため、ユリウス暦ではおよそ128年で1日真の一年よりも早く進むこととなった。

日付がずれることくらい我々からするとそんなに大きい問題のようには感じられないが、中世のキリスト教徒にとっては大問題だった。キリスト教徒にとって最も重要な祭日は復活祭だった。教会の規則で、復活祭は春分の日を過ぎた最初の満月の日の次にある日曜日に祝うことになっていた。しかし、ユリウス暦の誤差のために、暦上の春分の日と『本当の』春分の日がだんだん一致しないようになってきた。

ユリウス暦に限らず、暦の一年が真の一年と一致していないことは知られていた。また、ヨーロッパやイスラム、インドの学者達によって真の一年の長さを計算する試みはずっと続けられてきた。

1582年には、ユリウス暦はすでに実際よりも10日すすんでいた。教皇グレゴリウス13世はこの年の10月5日から14日までの10日間を飛ばし、改暦を断行する。新しく作られた暦では、閏年は4の倍数の年は閏年だが、このうち400年に3回は閏年としないというものである。この閏年としない年は、100の倍数で、かつ、400の倍数ではない年である。ちなみに、西暦2000年は、100の倍数の年であるが400の倍数の年にあたるので、グレゴリウス暦では閏年となる。グレゴリウス暦も完璧ではなく誤差はあるが、その誤差は真の一年に対しておよそ2800年で1日伸びるだけのわずかな誤差であるため、当分は問題なさそうである。