新 地方自治入門 行政の現在と未来

岡本 全勝 著
時事通信社

著者は、旧自治省の官僚で、現在は総務省課長、東大大学院客員教授などをつとめる日本きっての地方自治の専門家である。一般人にも分かりやすく書いてあって大変に良い。ただ、日本の地方自治をかなり自画自賛しているように見えるところもあるが、日本の地方自治の問題点を的確に指摘しているのでよい。

日本の地方自治の最大の問題は財政にあるだろう。つまり、先進国では、日本は歳入からみるとアメリカに次ぐ「小さな政府」である。ヨーロッパでは税金や社会保険料のような国民負担の比率が日本にくらべ非常に高く、スウェーデンにいたっては7割を超える。一方、歳出の規模から言うと日本の行政サービスは「大きな政府」である。歳出は大きいのに歳入は小さいわけだから、当然、赤字になり、この赤字は、国債で穴埋めすることになる。これが、現在の日本の財政悪化の原因の一つである。ヨーロッパでは、サービスの見合った負担をちゃんと求めてきたが、日本では一切増税しなかったことが問題であると著者は指摘する。そして、これを解決するには最終的には増税以外に無いだろう。