凍土の共和国 北朝鮮幻滅紀行

金 元祚 著
亜紀書房
本書は、北朝鮮に帰国した同胞に会いにいった在日朝鮮人によるルポである。本書が書かれたのは、今から20年以上前であるため、今とは事情が多少異なるかもしれないが、北朝鮮の状況が当時よりも改善しているということは無いだろう。

著者は、帰国運動の間に北朝鮮に帰国した家族に会うため、北朝鮮訪問団に参加した。当初は、著者もすぐに家族に会えると思っていたが、その期待は裏切られる。実に20日間にわたって「学習」を強要される。そして、やっとのことで家族と会えるものの、それはわずか3泊4日。しかも、常に監視がつき、家族水入らずで過ごせるのは夜中だけである。著者は、この北朝鮮訪問で、北朝鮮に対して完全に幻滅する。

それにしても、運命というのは非情だと思った。総連のウソにだまされ、人生を棒にふった帰国者達。一方で、帰国しようと思いながら、「運悪く」帰国が出来なかった著者のような在日朝鮮人たち。人生はちょっとした決断や運不運でここまで変わってしまうものなのか。努力すれば必ず報われるなどという戯言は通用しない。本当に人事ではないと思った。