0歳児がことばを獲得するとき 行動学からのアプローチ

正高信男 著
中公新書
赤ちゃんは生まれたときは、全く自我の無い、動物のようにみえる。しかし、実は赤ちゃんの言語獲得のプロセスは生まれたときから、否、母親のおなかの中にいるときから始まっているということが分かった。赤ちゃんは母親の声と別の声をかなり早くから区別できる。

また、お母さんからおっぱいをもらうときも、ただ、一目散に飲むのではない。赤ちゃんは、大人とはのどの構造が違っていて、おっぱいを飲みながら同時に息をすることが出来る。だから、絶え間なく飲み続けることも可能ではあるが、実際には、数秒間飲んだ後、数秒間は休む。このとき、母親は赤ちゃんが飲むのを休んでいるときに、よしよしと赤ちゃんを揺らしてあやす。この行動は、母親が無意識に行う本能的な行動である。そして、母親があやしているときは、赤ちゃんは決しておっぱいを飲まない。このようにして、赤ちゃんと母親は生まれたときから、コミュニケーションを取り合っているのである。