首相支配 -日本政治の変貌

竹中治堅 著
中公新書

著者は、2001年の小泉内閣をもって成立した新しい政治体制を「2001年体制」と読んでいる。2001年体制の特徴は以下のとおりである。

  1. 政党間で競争が行われる枠組みが整った
  2. 首相の地位を獲得・維持する条件が変わった
  3. 首相の保持する権力が強まった
  4. 行政機構の姿が一変した
  5. 参議院議員が保持する影響力が増した

この2001年体制を成立する原因となったのは、小泉純一郎個人の力ではない。2001年体制の成立した背景は以下のとおりである。

  • 選挙制度中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変わった。このため、自民党総裁の人気が選挙の重要なファクターとなったこと、また、自民党総裁の持つ公認権を通じて衆議院議員をけん制できるようになり、総理・総裁の権力が格段に高まった。
  • 政治資金規正の強化により個人で政治資金を集めるのが難しくなった。このため、政党助成金の配分権をもつ執行部の権力が高まり、執行部に対する自陣事件をもつ総理・総裁の権力が増大した。
  • 行政改革の結果、内閣府の権限が大きくなった反面、旧大蔵省の機能が実質的に、財務省金融庁、日銀、内閣府の4つに分割されたため、旧大蔵省=現財務省の持つ権限が縮小した。
  • 経済財政諮問会議が設立されたことによって、首相の行政上の権限が高まった。首相は議長として経済財政諮問会議を取り仕切ることにより、経済財政運営の実質的な意思決定を行うことが出来るようになった。

以上の理由から、自民党総裁=首相の権力が高まったことが2001年体制の根本であり、小泉内閣はこの制度が本格的に定着させたと言える。2001年体制の成立の原因は、簡単に2点にまとめられる。
1.選挙制度改革、政治資金制度改革などの「政治改革」により、自民党総裁の権力が高まった。
2.「行政改革」の結果、総理大臣の持つ権力が高まった。