自由論

J.S.ミル　著　（岩波文庫）

• 意見の自由を保障することの重要性

意見の自由および意見を発表することの自由は、以下の4つの理由により重要である。

１．ある意見に沈黙を強いるとしても、その意見は万が一にも心理であるかもしれない。
２．沈黙させられた意見が誤謬であるとしても、それは心理の一部分を包含しているかもしれないし、通常は包含していることがしばしばある。
３．一般に認められている意見が単に心理であるというにとどまらず、完全なる心理という場合においてすら、それに対して活発な真摯な講義提出することが許され、また実際に提出されるということがないならば、その意見を受容する人々の大多数は、偏見を抱く仕方でそれを抱き、それの合理的根拠を理解しまたは実感する機会を失う。
４．その教説そのものの意味が失われまたは弱められて、その意見が人の性格と行為とに与える生き生きとした影響が抜き取れられるという惧れがある。

• 異なる意見に対する寛容さと他人の自由を尊重することの重要性

世の中には、自分の嫌悪をする好意を自分に対する権利の侵害であるかのように考え、、また、自己の感情を傷つける暴行であるかのようにそれを憤る人が多い。また、他の社会が退歩的に思われ、その制度とぜんぜん無関係な数千マイルの外にある人々にとって憤激するべきことだからといって、その破棄を要求するようなことは、承認されるべきではない。